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草 津 街 道

 

 

 

 

我々家族の素行がよかったのか、雲ひとつない天気だ。

我々家族は草津へと向かっている。

そう、草津温泉で有名な群馬県草津町である。

 

 

草津への道はJR吾妻線の長野原草津口という長い名前の駅を下車し、そこからバスで約30分かかる。終点の草津バスターミナルでそのバスを下車し、無料シャトルバスに乗り込み約20分でロープウェイの山麓駅に到着した。そこからロープウェイ(といってもスキーヤー用の6人乗りのいわゆるゴンドラリフトである)で10分ほどで山頂駅に到着する。これから何が起こるのか何も分からず恍惚の表情となる美優と、何かを期待する顔つきの雄輝だった。

 

 

周りは雪一色だ。そして周りのゴンドラ内は、そのほとんどがスキーヤー或いはボーダーだ。下には滑走するスキーヤー達が見える。あぁ、おやじも滑りたい・・・。

 

 

寒さでおかしくなったのか、おたけびをする雄輝。てのは冗談だが、始めてのスキー場に少し緊張気味の雄輝である。美優は冷えたのかお腹が痛いといっている。我々はこのまま進むかどうかの崖っぷちの選択を余儀なくされた(プロジェクトX風)。そのとき、その決定を任されたのは家長ことおやじである。そしておやじは静かに、そしてゆっくりと語り始めた。

 

「まあ、せっかく来たんだし、面白くなったらお腹痛いのもの忘れるんじゃないか?」

 

「・・・。」 妻は、何も言おうとはしなかった。

 

ということで全く説得力はなかったのだが、美優の顔にまだ笑顔があったので、先に進むこととした。ここから先は雪上車で進む。いったいどこへ行くのか、それはあとのお楽しみである。

 

 

10分ほど雪上車で山を登る。誰にも踏まれていない雪原に着いた。雪上車をおり、とりあえず記念写真。すると遠くから聞こえてくるプロペラ音。そしてその音はどんどん近づき、尾根の向こうからその機体を現した。そう、我々が待っていたのはヘリコプターである。

 

 

そのヘリコプターに乗り込む私達。シートベルトを締め、準備が出来ると、エンジン音が高音に変わり、そして機体はふわりと空中に浮いた。浮いたと思うと一気に上空に躍り上がった。眼下には我々の乗るヘリコプターの影が付いてくる。

 

 

ヘリコプターは操縦士が2名、客は8人乗りだ。

副操縦士の方だろうかそれとも操縦士でもなんでもない人なのか分からないが、マイクを使っていろいろと説明をしてくれている。しかし、我々には全く聞こえなかった。そう、羽の音しか・・・。

 

 

聞こえない説明の主は白根山の湯釜(ユガマ)のことだったのだろう。直径は約300m、火口湖にたたえている水は、pH1.2(酸性)のエメラルドグリーンの硫黄性の水だ。そう、我々家族は、この白根山の湯釜をヘリコプターで上空から見るという目的でここまできたのだ。スキーするわけでもないのにスキー場のゴンドラに乗り、雪上車に揺られてここまで来たのだ。しかし、そのヘリコプター遊覧はあっという間のものの5分で終了した。

 

 

そして我々は、ヘリコプターに別れを告げたのだった。

 

 

雪上車、ロープウェイ、バスと乗り継ぎ、標高2160mから降りてきた。草津の温泉街付近は標高1215mであり、垂直に約1km降りてきたことになる。

とにかくお昼を過ぎており、「腹減った。」とうるさいチビ達の要望に応えるためにも飯を食わねばならない。観光客が最も集まる観光名所「湯畑」に向けて我々は歩き出した。

この湯畑には、幾本もの長い木樋が走っている。ここを流れる源泉からの湯は高温のため、この木樋に流され自然冷却され、各旅館に送湯されるのである。木樋を通った湯は湯滝を経て湯壷へ落ちる。その湯壷はブルーグリーンに輝いており、夜になるとライトアップされ一際美しいという。

 

 

この草津温泉の特徴はまず、豊富な湯量である。自然湧出量日本一を誇り、その量は毎分36,839リットルだ。またその質も日本有数の酸性度を誇る。pH値は2程度で、例えば1円玉は湯に漬けておくと1週間で消滅するらしい。

湯畑の中に、四角に組まれた木の枠が沈んでいる(写真右上)。この木枠は、江戸時代の八代将軍吉宗が汲み上げ江戸に送らせた際のものらしく、この湯は「御汲上の湯」と呼ばれていた。1596年に徳川家康が、豊臣秀吉に勧められて、草津の湯を江戸城へ運ばせて入浴していたことも、文献によって明らかになったという。当時は前田利家なども草津温泉に入湯していたそうだ。

 

 

♪ 草津よいとこいちどはおいで ハドッコイショ お湯の中にもコリャ 花が咲くよ チョイナチョイナ ♪

 

そしてようやくチビ達のお待ちかね、昼食となった。予めネットで探しておいた「グランカフェよしだや」だ。和風のつくりの外観の中は洋風のつくりの店内。ここ「よしだや」はピザ・パスタの店だ。特性のピザは生地は薄焼きだがふんわりしており、中央に半熟目玉焼きがのっかったなかなかのお味。パスタは和風ソースのきのこパスタと、クリームソースのガーリックまいたけパスタを注文、こちらもおつな味だが、まいたけクリームソースはガーリックが効いてるのと鷹の爪がまぶしてあるので子供にはお薦めできない。

 

 

食後、チビとかみさんは温泉街沿いの店の前で「温泉まんじゅう」を無料配布しているところでたむろし、それを食い終わったと思ったら、その先10mの温泉まんじゅうをまたもらって食べていた。まんじゅうに満足した一行はその足で西の河原(サイノカワラ)へと向かった。

西の河原はバスターミナルから歩いて15分くらいのところにあり、至るところから温泉が湧き出し、もうもうと湯煙りを上げ、温泉そのものが川となって流れている。

西の河原の入口の看板(↓)には約1mの雪が積もっていた。た、倒れないのだろうか心配だ・・・。

 

 

この西の河原を登っていった先に「西の河原露天風呂」がある。

我々の最終目的地、今日の疲れを癒す温泉への入湯だ。500uの風呂面積を誇る大露天風呂である。大人(中学生以上)500円、子供(小学生)300円、幼児は無料だ。あくまで温泉に浸かるのが目的のため、体を洗うための施設は一切なく、またその行為は禁じられている。圧倒的な広さのため、それなりの人数の観光客が浸かっているのだが、全く余裕でひと目を気にせずのんびり出来る。恥を忍べば泳ぐことも可能だ。但し、脱衣所は狭く不便だった。せっかくの大露天風呂、入る前に苦労するのもなんだし、入った後、脱衣所でのんびりするのもいいのではないかと思うが、そのようなスペースはない。脱衣所にビールやジュースなどの販売機を置けばだいぶ儲かると思うのだが、下衆の猿知恵だろうか?

 

広大な露天風呂

 

日帰りという時間がない中で、利用交通がローカル線ということもあり、行き帰りの時間が決まっているため(それを逃すと非常に困難な状態に陥ってしまう・・・)分刻みの工程となった一日だった。それを乗り切った私達、というか、そのような分刻みの旅程を立てた綿密なおやじの計画があったればこそ成し得た日帰り旅行だった(っていいすぎか)。最後の露天風呂はもう少しのんびりと浸りたいと当初思ったのだが、風呂を上がってみると存外そうでもなく、汗が止まらないほど体の芯から温まっていた。あれ以上浸かっていたら上気せてしまっていただろう。

 

 

そして我々は帰途に着いた。

往路とは打って変わってがら空きの列車(往路は満席、途中まで立ち席だった・・・)、おとぉとおかぁは「眠い〜。」と、うとうと。疲れを知らないチビ達は全く元気で自宅最寄駅まで遊び、騒ぎ、そしてはしゃぎ続けたのだった。

家に着いて風呂に入った。

美優が言った。

「うちのおふろのおゆは、ふつうのみずだねぇ。」

 

おわり

 

 

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